境の坂井に咲く水守

目次

はじめ
ひとつ
ふたつ
みっつ
よっつ
いつつ
むっつ

初出

この小説は、合同誌『Lithos - 六色の宝石物語 -』に寄稿させていただいたものです。
製本版が完売し、発行より十ヶ月経過しましたので、こちらでも公開いたします。
ご一緒してくださった桐原さくもさま、東堂燦さま、ゆあさま、そしてお手に取ってくださった皆様に、心より御礼申し上げます。


2015.1.1 掲載開始

概要

 参る、参る、御前が参る。幸菱映え、帯白く。花の顔、喉白く。花嫁御寮が坂井へ参る。

 数え十五の瞠(みはれ)は、『獣返りの子』であると、異形の子であるとされるがゆえに、神域の門をたたいた。
 俗世に在ることは、もはや望まない。望めない。そのような身上の者は、しかしひとりのみならず。
 かくて境界線上の神域『境の坂井』で、獣返りの名で厭われる、少年と少女はあいまみえる。東西の双領にあっては異形以外のなにものでもない、常ならぬ身を互いにさらして。
 異質なものと称される、歪を抱えこんだふたりが、境界線上で手繰り寄せる、呪いと祈りのその顛末。

瞠/みはれ

東領の嫡流。
『獣返り』の花嫁御寮として境の坂井へと嫁ぐ。

七宮/ななみや

西領の姫君。
瞠の嫁入りよりも数日先に、境の坂井へと放逐されていた。

由姫/よしひめ

瞠と七宮の母親。

兄君/えぎみ 妹君/おとぎみ

境の坂井の侍従烏。