リルの記憶 - 覆面作家企画特設ページ

覆面作家企画7 後書き

■作者名
■サイト名&アドレス

 こちらは意気込みにて解答していますので、割愛します。

■参加ブロック、作品番号、作品タイトル、作品アドレス

 B04「マリー・アントワネットの手を取って」でした。


■ジャンル

 広義でのビルドゥングスロマン……?
 時折、マリーとアマデウスの関係について恋、と挙げて頂きましたが、ジャンルとしては恋愛ではない気がします。

■あらすじ

 月も曇った熱帯夜。
 小さな“あたし”は、ママンのクローゼットの奥から引っ張りだされて捨てられて、おかしな男に拾われた。
 あたしを拾ってあちこち旅する若いピアノ弾きのアマデウスは、ママンやママンのお友達とは違って、優しくて穏やかで、いろんなことを“あたし”に教えてくれた。だけどどうしたって、それだけの日々はそれだけじゃあ終わらないっていうことは、昔々から決まっていて……。
 これは、“あたし”が“あたし”になる為に、必要だった物語。

■意気込みテンプレを使用された方は、URLを教えてください。

 こちらです。


■推理をかわすための作戦は?

 今回は特に考えなかったかな……。
 主役であり視点の主であるマリーに、日頃使わないようなカタカナ言葉や語調を使って貰ったくらいです。
 あと、一応ですが既にご存じの方以外にもばればれになると困る……というか、面白みもなくなってしまうので、覆面の情報が出ているあたりと、マリー・アントワネット関連のツイートはさくさく消しておきました。

■この企画のために書いた作品、他にもありましたか? 
■その作品を提出しなかった理由は?

 ここは意気込みで書いているので割愛しますね。

■作品のネタを思いついたきっかけは?

 なんだったかなあ。元々は、マリーの名前はマリー・アントワネットではなかったし、アマデウスの名前もついていなかったんですよ。
 過去に書いている途中だった短編の書き出しから話を起こしました。
 ちょうど、サンドウィッチを食べているあたりまでは何年か前に書いていて。そういえば、覆面7の開催前くらいの時期だったかな? それから放置していました。
 なので、どなたかが(冬木さんだったかな?)「覆面7のR18-Gに似てる!」と仰っていたのは、それのせいかもしれません。
 ただその後、今回の覆面に出したい! と感じた短編が2017年の10月頃にできあがって……いたはいいものの、開催もそろそろ近いし、とその作品を久々に開いてみたら、「あまりにも琴子では?」となったので、急遽別の話を用意する必要が出てきました。
 読んで頂ければ察して頂けると思うのですが、その作品というのは、「揺籃司祭と最初の果実」です。
 そこで急遽なにか書き直さないと。となった――のはよいものの、当時締切を並行して2本抱えていたので、ここに増やすのは至難では? と考えて、いくつか案を出してみたりしたものの、10万文字を超えそうになったり、どうもしっくりこなかったので……結局、過去の短編の書き出しから敗者復活戦を経て採用されたのは、最後まで書き切った中で一番気に入ったラストになった、マリーとアマデウスの話でした。
 マリーじゃなかった彼女がマリーになったり、アマデウスに名前がついた課程は、そもそも「悪人と呼ばれた女と同じ名前を持っている」子供の話が書きたいなあ、と感じて、名付けの文化や、あとは採用した時代背景と相まって、「マリー・アントワネット」に登場して貰うことになりました。中国の悪女や、それこそアドルフだとかとも迷ったんですけれど、前者は姓まで同じだとしても、いまひとつ読者がぴんとこない/あるいは作中で子供の心理に「ナポレオン政権下のマリー・アントワネット」ほどは影響が出ないかも、と感じた点、後者はそれこそ、現代にまだ継続している問題でもありますし、「凱旋の火矢は墜されたし」ともなんとなく時代背景が被るなあ、と考えた点から、却下となりました。
 それと、「悪人と謳われた」人間にも、過去「寄り添ってくれた別の偉人(現代まで名の知れた人)」という話のストックとして、マリー・アントワネットとアマデウス・モーツァルトの逸話は、それこそ流行のゲームの影響で、そこそこ有名になったのでは? と考えた打算もございます。
 私が彼らのエピソードを知ったのは、幼い頃にモーツァルトの伝記を読んでそこで、だったのですが、ある程度の読者には共通認識を持っていただけた方が、楽しめる話だとも感じたので、書くなら今だし、出すならきっとゲームのプレイヤーも多く参加している(だろう)大きな企画だな、と。
 特にウルさんが大きく反応をしてくださって、その点ではこのたくらみは成功したと言えるのかなと感じています。

 
■ストーリーの構築において気を使った点、苦労した点などあれば教えて下さい。

 情報の出し方、でしょうか。
 あくまで歴史上の人物の知識を下敷きに必要としているので、読み手がどの程度世界史等の知識がありそうか、を推測するのが難しくて。
 でも、そっと小ネタ的なものも入れたくは思ったので、細々としたところには歴史上の、細かなな要素も入れています。
 たとえば最初にマリーが挙げる「シャルロットとかテレーズとか」の名前は、王妃マリー・アントワネットの長女である、マリー・テレーズ・シャルロット・ド・フランスからとりました。彼女の名前の理由が同じ王侯貴族の「マリー」でも、「マリー・アントワネット」ではなく、「マリー・テレーズ」だとかだったら、ああまで気にしてしまう土壌にはならなかったのではないかと思いますが、そうではなかったから、マリーはアマデウスに手を引かれることを受け入れました。

 それと、二人の関係は最後まで、誘拐犯とその被害者、であり続けることをやめないように、読み手の方にはそう見えなくても、それでもその名前は捨てないようにと気を配りました。
 この話が物語であり、また過去の時代を舞台にしていても、です。

 

■削ったエピソードなどありましたか? 作成裏話歓迎です。

 上での解答とも被るのですが、アマデウスの「アマデウス・モーツァルト」要素を、どれだけ出そうか迷いました。
 もっと年老いた人物や、幽霊めいた人物にして、「アマデウス」だけでなく「モーツァルト」とまで名乗らせて、かつピアノで「きらきら星」でも弾かせたりして、「あれ、もしかしてこのアマデウスって本当にモーツァルト?」とまで思わせるような形を狙おうかなとか。
 でも、そうすると彼の諜報活動とはそぐいませんし、モーツァルトはマリー・アントワネットの処刑よりも前に亡くなっていて……みたいな情報の補足もしないといけなくなります。字数に収まらなくなるので、知ってる人は読みながら夢を膨らませられるかも? くらいにカット。

 また、アマデウスはドイツ人の諜報員なのでは? と、いくらかの方に言及していただきましたが、これは成功したな、と感じる点です。
 アマデウスは、少なくともドイツ……というか当時のドイツ語圏を母語としたり、オーストリア大公国ないしはプロイセン、あるいは、選帝侯国の放った諜報員ではありません。
 どちらかというと、ローマ・カトリック寄りの勢力の諜報員なのではないかな……修道院に協力者が多いですし。
 つまり、アマデウスもアマデウスで、最初から最後まで嘘つきだったわけです。日頃から、咄嗟の時にはドイツ語を使うし、必要な時には、言葉の端々になまりもだすようにしていたのではないでしょうか。自分のことを、ドイツ語圏の出身者だと、周囲に思ってほしかったわけです。
 ですので、「アマデウスのたくらみは、成功したな」と、皆様のご感想を拝見して、私も少しほっとした次第です。

 あとは、(この言葉は作中からは削りましたが)邸宅にオテルとルビをふることや、娼婦たちや新興階級の半社交界であるドゥミ・モンド、ロレットやグリゼットと呼ばれる女性達だとかの要素を出すことも、文字数と手間の関係で、加筆は諦めました。このあたりのことは、覆面執筆中に見に行った「ボストン美術館 パリジェンヌ展」で知ったのですが、いつか小説で書いてみたい要素です。
 
 
■その作品の続編または長編化のご予定は?

 たぶんですが、少なくとも続編はないと思います。
 かなしいことも、楽しいことも、子供の時代にあったことを、なにもかも終わったものとして振り返ることができるようになったから、マリー・アントワネットは大人になることにしたのだと思うので。

■その作品で気に入っている箇所はどこですか?

 最後のたたみかける部分でしょうか。それから、「この嵐みたいな時代の先を、なりたいように生きていく」も。


■推理期間中、褒められた点は?

 何人かの方に挙げていただいたのですが、語り手の勢いに引き込まれる、といった旨のお言葉が嬉しかったです。
 
■推理されてみて、いかがでしたか?

 そもそも今回素顔で出てきたので、おつきあいくださりありがとうございましたー! お世話になりました! と申し上げたい気持ちです。
 ただ、一点非常に怖く感じたこともあったので、その点については下の方に別途添えさせていただきます。

■あなたの作品だと推理された作品はありましたか?

 B02「フーガには二つ星を連ねて」と、B06「手児奈物語」、B11「手探りカデンツァ」には最後まで票が入っていたと思います。
 他にも、ファーストインプレッション推理ではB03「ジャクリーンの腕」、B05「赤い手 白い手」、B06「イハンスにやらせろ」とばらけていたようです。
 それにしてもこの投票システム、便利になったなあ……。主催様ありがとうございます。

■あなたの作品が他の方の作品だと推理された作者さんはいましたか?

 多かったのは歩く猫さんの作品では? というお声でしょうか。あとmoesさん。

■推理してみて、いかがでしたか?

 唯一推理らしい推理をしたのはCブロックのピンポイント推理ですが、C02が糸さん、C08がカイリさん、C09が冬木さんという点で正解です。


■あなたの正解率、どのくらいでしたか?

 全体の数は少ないのですが、いちおう正解率100%、かな。




 次の設問にいく前に、ちょっと長くなるのですけれど、「推理されて怖かった点」のお話をさせてください。
 せっかくの楽しい後夜祭ですので、ご不快に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが……ご容赦願えますと幸いです。

 実は今回推理される課程で、Twitterでの個人的なやりとりの一部を、他参加者の外部のブログに掲載された、という事がございました。
 そのやりとりに関する私のツイートは、覆面作家企画が作品公開された時点で、既に手元で削除しております。ですので私自身のツイートが掲載された、というか、正確には

・私の本アカウントを通して行った個人的なやりとりの一部(私とお話をしていた相手の方のツイートの全文)が他参加者の外部のブログに掲載された。(こちらについては、現時点では相手のフォロワーさんからの要望で、該当部分は削除済み、引用のためのURLだけ残っている状態です)
・私が本アカウントとは別に用意している、企画用の呟きをする為に用意したアカウントのツイートが、同じく掲載され、現在私の手元からの操作では文面は削除が不可能な状態になっている。
(このツイートの転載については、私からは削除のお願いはしていません。理由は後述します)

 事となります。
 後者も正直、よい気分はしていないのですが、それよりもなお、正直に怖いな、と感じたのが、前者についてです。
 
 というのも、これは個人的に自分の中でとりきめていたことだったので、特に明言はしていなかったのですが、今回も前回も、覆面作家企画に参加する上で、Twitterの扱い方には個人的に取り決めをしてございました。
 覆面のお話は企画アカウントで、それ以外の私的な話は本アカウントで呟くこと。という形です。
 ですので、「え、推理の為にとの言葉があれば、こんな内々の呟きまで、というかそもそもツイートまで晒されてしまうものなの?」と感じ、怖いな、と感じた次第です。(乱暴な言葉ではあるのですが、その時はこう思いました)
 次回からは本アカウントには開催中は鍵をかけるなり、その点を明言するなりしておくべきだなと考えますが、「こういうことがあった」ということをあとあとに次の企画で参加される方のツイートの扱いの参考に、そして自分の為に残しておきたい気持ちもあり、ここに追記させていただきます。



■この企画に参加して、改めて気づいたことはありますか?

 覆面作家企画には年単位で参加し続けているのですが、参加するごとに、そして徐々に、自分なりの特徴、みたいなものが、強まっているのではと、探偵さんの反応や、いただく感想に、なんとなく感じられました。
 嬉しいことです。
 逆に言えば、特徴、あるいは書ける分野的なものが一辺倒になってしまっているということでもあるのですが。

■参加作品の中で印象深い作品をあげてください。

A07「最果ての巫女」
B10「ローマでも長安でも洛陽でもない、ある都の休日」
C02「月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。」

あたりでしょうか!


■参加作品の中で印象深いタイトルの作品をあげてください。

上の三作品と被らないものを挙げるなら、
C09「プディヤの祈りは銀の蝶になって」
D10「吾輩はルンタくんである」
E02「五月の庭、蕾の君は目を閉じたまま」
E06「幕張でバーチャルアイドルミゾレと握手」


■参加作品の中で面白かった3作品&一言感想、お願いします。

印象深い作品のなかから述べさせてください。

A07「最果ての巫女」

 文章が、とくに台詞回しが流麗で、世界観もどこかものかなしげで大好きです。
 作者様がD.W.ジョーンズの「アブダラと空飛ぶ絨毯」をお読みになっている、とあとがきで述べられていたので、それだけでももうとてもお話ししたい……と感じました。

B10「ローマでも長安でも洛陽でもない、ある都の休日」

 異世界トリップなんですけど、そして男装女子で成り上がりなんですけど、なんですけど、そういった要素を入れながらこう言う話も書けるものなんだなあと新鮮な気持ちで読了しました。
 私もいろいろ試してみたい! と感じてしまいます。
 二人の、いっとき交わったけれどもう交わらない道筋、という関係性がよいなあと感じます。

C02「月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。」

 まずさらっと鍵善のお菓子とか、ポンと身を投げ、とかの言葉を出してくる風情が好きなんですが、なにより誌子さんと七森さんのお二人がずるい。才能と血筋と、理解者であり敵対者であり、とりあえずは幼馴染ということにしている関係と。どれも魅力的すぎるので、絶賛続編待ってます……。


 以上となります、最後までおつきあいくださりありがとうございました!