その石は

母によって託された。
御神の僕によって見いだされた。
ながく、地中に眠っていた。

そして、石は既に母の手を離れ、
王の掌中に隠された。

石の名はしかし記されることなく、
ただ輝石とのみ、今に伝わる。

亡き王、あなたと
夜明けに臨む

物語

異国人の王太子妃は、即位を控えた幼い夫へ物語る。
かつて幼い王女が過ごしたしあわせな日々と、既に位を退いてひさしい異母兄王と、彼の王がながく水盤庭園に籠めていた、『輝石』の少女の思い出を。
いつかの夜に託された花嫁の持参石を、その手の内側より明かしながら。

目次

1   ライゼ・ルタ・クーリフ
2   イシュリシア
3   セシャルトリエ
4   サリュ
5   カナルゼン・カラフ

人物

ライゼ・ルタ・クーリフ
クストル王国の幼王太子。乳色の肌に焦げ茶の眼。摂政を務める母王妃から、此度王位を継承する。

イシュリシア
紫の双眸を持つリトカリタ女王。幼名をシュリア。セシャルトリエの異母妹王女。ライゼの花嫁。

セシャルトリエ
リトカリタ先王。焦げた蜜色の肌に黒髪の青年。王者の証である紫の眸を持ち得ない、妾腹の碧眼王。

サリュ
水盤庭園に籠められていた、白髪紅眼の異相の少女。二代のリトカリタ兄妹王の治世の影に息衝いた。

カナルゼン・カラフ
長身痩躯の文官。王位を退いた主君セシャルトリエの側近として、当代女王イシュリシアを支える。

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 この小説は、合同誌『Lithos - 六色の宝石物語 -』に寄稿させていただいたものです。
 製本版が完売し、発行より十ヶ月経過しましたので、こちらでも公開いたします。
 ご一緒してくださった桐原さくもさま、東堂燦さま、ゆあさま、そしてお手に取ってくださった皆様に、心より御礼申し上げます。


2014.12.31 掲載開始
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